JR東日本と日立、AIを活用した鉄道設備障害時の支援システム実用
2022/11/29(火)
株式会社日立製作所(以下、日立)は、鉄道設備の輸送障害発生時において、指令員による早期の障害原因の特定や復旧方法の指示を可能とするAI支援システムを開発した。11月28日付のプレスリリースで明かしている。同システムは、東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本)とともに現場実証を経て、実用化している。
障害発生時において、鉄道設備の現場を直接確認することが困難な中央の指令員は、経験・ノウハウに基づく情報収集と判断が重要となる。一方、長年のノウハウの継承には時間を要するほか、特に、発生頻度の低い障害については、熟練の指令員でも経験を積むことが困難なため、難しい判断・対応が求められるとも言われている。同システムでは、日立独自のリコメンドAI技術を活用し、過去の障害対応に関する記録から類似度の高い事象を判定して、ダッシュボードとして一覧化するというものだ。障害発生時に、指令員が発生したエラー内容や現場で行った確認事項を入力すると、過去の類似事象の原因や対策を提示する。
また、人の経験や知識からは類似性に気付くことが困難な発生頻度の低い稀な事象についても、発生事象の稀さ(レア度)を加味した類似度判定により、類似事象を抽出・提示することが可能だ。
さらに、両社は、同システムの実用化に向け、2020年4月より、軌道回路での障害を対象として実証を進めてきた。実証では、JR東日本の指令室にて活用し、リコメンドAIの提案内容について現場の指令員から高い評価、一定の有用性が確認できたことから、本番運用を開始する。
なお、日立は、今後もAIをはじめデジタル技術を活用した輸送障害の早期復旧、日本の安全・安定輸送の実現に向け、取り組みを推進する。くわえて、日立のLumada※で展開される各種ソリューション・技術を活用し、指令員が活用する情報と環境の変化に応じて、さまざまな早期復旧に役立つツールや各種システムと連携を図っていく予定だ。
※ 利用者のデータから価値を創出し、デジタルイノベーションを加速するための、日立の先進的なデジタル技術を活用したソリューション・サービス・テクノロジーの総称
ほかにも、同社は、今回のAIを活用した「オペレーション・リコメンデーションシステム」や、その取り組みノウハウ・実績は、さまざまな産業分野における課題解決に応用できるものと考えているという。そして、それらの幅広い活用を検討していくと述べている。