MaaS Tech Japan、データ利活用に向けSeeMaaS提供
2022/7/4(月)
株式会社MaaS Tech Japan(以下、MaaS Tech Japan) は、MaaSプラットフォーム「SeeMaaS(シーマース)」をリリースする。6月30日付のプレスリリースで明かした。
近年、「あらゆるモビリティを1つのサービスとして捉え、シームレスにつなぐ」MaaSの推進が加速している。その背景には、少子高齢化や人口減少に加え、新型コロナウイルスの影響による地方自治体や交通事業者における公共交通の維持の困難があげられる。また、MaaS推進により、都市部における渋滞・混雑の緩和、観光客の周遊促進による地域活性化やサステナブルツーリズムの推進、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みに貢献できることも、注目される要因になっている。そういったなか、オンデマンド交通やシェアサイクル、タクシー配車アプリなど新しい交通サービスも生まれている。しかし、MaaSにより社会課題を解決するには、それらを含めた多様な交通サービスや施策を、地域特性を踏まえつつ、適切に組み合わせることが必要だ。そのため、その実現には“移動データの利活用”が欠かせない。
MaaS Tech Japanはこれまで、持続可能な地域交通の形成や地域の活性化に向けて、自治体や事業者との共同プロジェクトを実施してきた。それらを通じて得られた知見やニーズを踏まえ、より多くの自治体や事業者を支援するためのプロダクトとして「SeeMaaS」を開発した。同社は、「SeeMaaS」の展開を通じ、データに裏打ちされた交通施策の策定・実行を支援し、移動課題の解決と他業種連携による新たな価値創出に貢献するという。
「SeeMaaS」の特長は、MaaSデータ統合基盤「TraISARE」によるデータ取得・統合と、MaaSコントローラによるデータ利活用だ。「TraISARE」を活用することで、自治体・事業者が保有する多様な種類・形式のモビリティデータをシームレスに統合する。データの取得には、交通系ICカードなどの既存のODデータやすでに自治体や事業者が導入しているMaaSアプリとの連携が可能だ。
また、「TraISARE」によって取得・統合した移動データを、ユースケースや分析目的に応じて集計・分析・可視化する。これらのデータに人口統計や施設情報、消費データなどを掛け合わせることで、観光、まちづくり、環境などさまざまな分野での利活用が可能だ。
さらに、「SeeMaaS」を活用することで、地域内の交通の現状課題をデータに基づき精緻に把握することができる。これにより、地域の特性に合った多様な交通サービス・施策を適切に組み合わせたMaaSの展開が可能だ。ほかにも、観光客の周遊促進、エリアマネジメント、環境負荷を低減する移動行動の促進等の取り組みなど、データに裏打ちされた施策の策定・実行につなげることもできる。また、施策のモニタリングと効果検証をデータに基づき行うことができる。これにより、施策の継続的な改善が可能だ。
また、同社は、交通分野のデジタル化やデータ活用にこれから取り組もうとしている自治体・事業者向けに、「SeeMaaS」のスターターエディションも提供する。スターターエディションは、公共交通の利用状況や利用者の移動実態を把握するためのODデータ※の取得・可視化に特化したプランだ。交通系ICカード等からデータを取り込み、利用者数・利用回数などの利用実績を数値やグラフにより可視化する。運行情報と合わせることで、各停留所の利用状況やODを地図上で可視化することが可能だ。これにより、特定のバス路線や停留所の利用者数などを視覚的に把握することができ、運行本数・路線の適正化や、利用促進施策などの定量的な評価ができる。
※ ODデータ:ODは英語のオリジン(Origin)+デスティネイション(Destination)の略語。ODデータは、出発地と到着地(目的地)の組み合わせごとの利用者数を表すデータのこと。(プレスリリースより)
このようにODデータを活用することにより、地域住民や観光客による公共交通の利用状況の把握や、利用実態に基づく施策の検討を行うことができる。また、公共交通の利用促進策や観光地回遊促進策などの施策の定量的な評価や施策改善案の検討も可能だ。これまでには、青森県弘前市や、長野県千曲市で実証実験を行っている。なお、長野県千曲市での実証実験は、株式会社ふろしきやが実施している。さらに、MaaS Tech Japanは、スターターエディションに加え、より詳細な現状把握・分析をマルチモーダルに行うことができるベーシックエディションを2022年秋ごろに提供開始予定だ。さらに、今後は、交通計画、環境貢献、医療・介護、教育・生活、小売・流通・消費、観光、防災等といったユースケースや分析目的に特化したプロダクトを展開する。そして、2030年までに、「SeeMaaS」を全都道府県内の自治体、交通事業者、一般企業へ展開していく。
なお、同社は、誰もが快適に移動できる社会を目指し、モビリティデータの利活用を促進することで、移動の変革を通じた社会課題の解決と新たな価値の創造に貢献していくと述べている。