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Osaka Metro オンデマンドバスの取り組みと展望

2022/3/2(水)

Osaka Metroが大阪市の生野区と平野区で社会実験運行を行っている「オンデマンドバス」。路線バスのような既定の経路や時刻表がない予約型のバスである。利用者自身がスマートフォンアプリ『Osaka MaaS 社会実験版』か『オンデマンドバスコールセンター』を通じて乗降場所や乗車日時を指定することで、システムが自動生成した最適化されたルートで目的地まで運行する。
同社は、この新しいモビリティの導入により、新たな移動需要の発掘と運行効率の改善の両立を目指し、都市における公共交通の持続可能性の向上に取り組んでいる。

そこで今回は、Osaka Metroの上新原公治さんに、同社が中期経営計画で掲げる「都市型MaaSの構想」と共に、その構想の根幹を担う「オンデマンドバス」の具体的な取り組みや今後の展望を伺った。

モビリティをシームレスにつなげた街づくりを目指す

――オンデマンド交通の前提として、Osaka Metro様が目指しているMaaSの世界観について教えてください。
Osaka Metroでは“交通を核にした生活まちづくり企業”を目指し、「都市型MaaS」の実現に取り組んでいます。これは、すべての移動手段をシームレスにつなげることで、次世代の交通インフラを作っていくということ。利用者の皆様の「生活の質の向上」に貢献するために、一人一人のニーズに合わせたきめ細かなサービスを提供し、さらなる街の発展と活性化を目指しています。通勤通学といった特定の目的だけではなく、生活サービスと交通の連携を進めることで、ちょっとしたお出かけや寄り道など、日常・非日常も含めたあらゆるシーンでMaaSをご利用いただきたいと考えています。
――都市型MaaSの実現のために具体的にどのようなことをされているのでしょうか。

まずは、鉄道やバスの施設をより良いものにしていくことです。バリアフリーや新しい車両の導入、駅やバス停で必要な情報を得られるようにするなど、施設のアップデートを徹底的に行い、安全安心な駅を作っていきます。また、オンデマンドバスや電動車いす、シェアサイクルなどのさまざまなモビリティを組み合わせ、鉄道やバスといった既存の交通網にシームレスにつないでいくこと。現状は、既定の路線や時刻表通りに鉄道やバスが走り、交通事業者の事情に合わせてお客さまに「乗りに来て」いただいている状態です。そこで当社は、既存の交通網にオンデマンド交通を組み入れることで、お客さまのご要望に合わせてこちらから「お迎えに行く」交通の実現を目指しています。お子さま連れやご高齢の方が、用途や天気、気分などに合わせて気軽に移動して頂けるよう、さまざまなモビリティを提供して参ります。

――生活サービスも含めたMaaSに関しては、具体的にどのような取り組みをお考えですか?

まずは、交通の結節点として「乗り継ぎハブ」を整備し、オンデマンドバスや地下鉄、路線バスの乗り換えの際、時間を有効に活用してお楽しみいただけるようなにぎわいの場を創出することを検討しています。乗り継ぎハブにはフードトラックや人気の商業施設を誘致することで、「乗り換えのための場所」を「わざわざ出かけたくなる場所」にして行くことが目標です。交通とサービスの連携の観点では、例えば、医療機関や飲食店、教育施設などと連携したサブスクリプションを導入し、交通を「サービスを受けるための手段」から「サービスの一部」に進化させていくことで、利用者の皆様の生活をさらに便利にしていきたいと考えています。

都市型のオンデマンドバス。気軽な交通手段として広がっている

――オンデマンド交通は現在、全国各地で実装されています。Osaka Metro様のオンデマンドバスの「強み」を教えてください。
当社のオンデマンドバスは、利用者の「出発地・目的地」と「駅やバス停」の“ファースト・ラストワンマイル”の移動をサポートすることを目的としています。一定の需要がある都市部において「既存の交通網」と「お客さまとの接点」を多く持っている当社自身がオンデマンドバスを手掛けることにより、「新たな市場の創出」と「公共交通の最適化」を同時に模索できることが当社の強みであり、使命でもあると考えています。

アプリ『Osaka MaaS 社会実験版』では、乗換検索での交通手段にオンデマンドバスを組み込み、交通手段に関するお客さまの選択肢を増やしています。当社では、MaaSの実装と他社との協業により、鉄道やバス、シェアサイクル、タクシーなどさまざまなモビリティをシームレスにつなげ、「きめ細かな交通網の実現」と「生活サービスと交通の新たな連携」に挑戦しているのですが、中でも、お客さまのニーズに細かく対応できる「オンデマンドバス」には、都市部において利用者・事業者の両面から新たな市場を切り開くことができるのではないかと大いに期待しています。

当社が掲げる「都市型MaaS構想」は、自社単独では到底なし得ない構想であるため、志を共有して頂ける多くの企業・団体等との連携を目指しています。オンデマンドバスについては、タクシー事業者との協業を視野に、鉄道やバスとの立体的な交通網の実現に向けてグループ会社の大阪シティバスと共に実証実験で経験を積んでいるところです。

――鉄道や路線バスでは補えないような交通空白地帯を埋めていく目的がオンデマンドバスにはあるのでしょうか?

オンデマンドバスは、既存の路線バスではニーズを満たしきれていない場所や利用者の方に対する「新たな選択肢の提案」という意味で始めた部分が大きいですが、可能性はそれだけではありません。大阪のように需要が集積している都市部において、目的地、出発地に近いところで利用者のニーズに合わせて運行できる「オンデマンドバス」は、通勤・通学、通院、買い物のための移動手段といった既存の交通の役割を超えて、「『移動』と『サービス』をつないだ新たな市場」を開拓できるのではないかと期待しています。

――社会実験として運行開始後、利用者様からはどのようなご意見がありましたか?

おかげさまで、「使い勝手が良い」といったご意見など好評です。「ベビーカーでも利用しやすい」といったご意見や、「高齢の方の移動に便利」といったお声をいただいています。ご要望では、「最寄りの病院に行きたい」「エリアをもっと広げてほしい」などもありました。また、平野区と生野区では利用料金は路線バスと同じ大人210円ですが、支払い方法をもっと便利にしてほしいというご意見もいただきました。アプリで便利さを追求する一方で、ご高齢の方など「アプリは使い方が難しい」と感じられている利用者も多く、具体的な使い方を直接お伝えする機会の必要性を実感しました。そこで、地域と連携してアプリの使い方の講習会を開催するなど、サポート体制の整備も進めています。

――Osaka Metro様のオンデマンドバスには、鉄道やバスと連携した「都市型」の側面があります。山間部と比較した特徴を教えてください。
都市部では、徒歩や自転車を利用されていた方が、オンデマンドバスを利用されているのが目立ちます。これまで、自転車や徒歩だと「ちょっと遠いなあ」「雨の日は危ないなあ」「寒い日は辛いなあ」と思っていた方が、生活圏内のスーパーや病院に行くのに利用されていることが多い印象で、「ちょっと利用する」という気軽な乗り方ができているようです。もちろん、通勤や通学といった特定の目的でのご利用もありますが、「ちょっとそこまで」といった気軽なご利用についても一定の市場が期待できるということが、都市の特徴なのではないでしょうか。リピーターも増え、月に20回ご利用下さっている方もいらっしゃいます。

こうしたリピーターをさらに増やしていくため、12月2日から、5,000円で乗り放題のデジタル定期券の発行を開始しました。これからは実際に乗車される個人だけではなく、オンデマンドバスの新たな市場を開拓するため、法人への販売も視野に入れていきたいと考えています。

――月20回の利用とはすごいですね!利用者を増やしていくために、デジタル定期券のほかに取り組まれている施策や予定はありますか?

まずは、オンデマンドバスの存在を知っていただくため、駅などでの㏚に加え、運行エリアでのポスティングや地域説明会などを行っているところです。さらに、これまでの経験から、アプリはダウンロードして実際の操作までのお手伝いが必須だということを学んでいますので、説明会を開催し、「こうやったら使えますよ」と実際の操作方法までお伝えしています。利用したいという方に、いつでも便利にご利用いただけるよう、地道に取り組んでいます。一方で、実際にご乗車頂かないとオンデマンドバスの便利さは伝わりません。そこで、クーポンなどを提供することで「『目的地』と『移動手段』の組み合わせ」を提案し、お客さまに最初の乗車を促せるような機会の創出に努めています。

オンデマンドバスの展望と大阪万博に向けた試み

――オンデマンドバスの今後の展望についてお聞かせください。

繰り返しになりますが、移動だけではなく、生活と組み合わせた便利なサービスを作っていくことが重要であると考えています。オンデマンドバスを、鉄道やバスなどさまざまなモビリティと組み合わせ、より便利に使っていただきたいと思います。そのためには、クーポンの例のように、目的地とモビリティを掛け合わせたサービスの実現が必要不可欠です。

――そもそも「オンデマンドバス」という概念は浸透しているのでしょうか?

これは本当に難しい部分だと実感しています。これまで割と普及活動に力を入れてきたと思っていたのですが、先日、オンデマンドバスのPRイベントに参加した際には、存在は認知されているものの、具体的な乗り方が十分に浸透しておらず、そのために利用をためらわれている方が多いことに気づかされました。オンデマンドバスの認知は、まだこれからです。

一方で、イベントで「アプリで呼んだら、バス停にバスが迎えに来るサービスです」という説明をしたところ、若い方を含めてみなさんとても驚いており、こうしたことからも幅広い世代に受け入れて頂ける可能性があると実感しました。

こうした経験から、「使い方を知って一度使っていただければ、利用が広まる」ことが期待できますので、今後も、オンデマンドバスの認知や利用促進のために、説明会や講座を開催して参ります。また、機能面でも使いやすさを追求し、実際にご利用いただいたユーザーの方からのご意見を反映して、継続的にオンデマンドバスのサービスやアプリの操作性・機能の改善に努めていきます。

――2025年は大阪万博。Osaka Metro様の目指すところを教えてください。
まずは、夢洲駅まで安全で快適な移動を提供していくことです。また、万博へのスムーズな入場や万博だけでなく関西全体でも楽しんでいただけるように、できる限り貢献していきたいと考えています。オンデマンドバスは、大阪のみなさんに利用してもらえる状態を目指していますが、やはり、先ほどからご説明しているような都市型MaaSを具体化していくことを目標にしています。万博という観点では、Osaka Metroとして鉄道の新型車両で盛り上げていきたいですね。あとは、当社ならではの交通の脱炭素化への貢献など、新しい技術を目に見える形でお示しできたらいいなと思っています。

【取材後記】 運行エリアの拡大やデジタル定期券、クーポンの発行など、サービスのアップデートが行われているオンデマンドバス。モビリティとオンデマンドバスが連携した街づくりにもさらなる期待が寄せられている。

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