特集ティアフォー第1回 世界のユニコーンたちと描く「自動運転の未来」
2023/10/27(金)
2030年を走るクルマ EV、SDV
スパコンを搭載した2030年の自動運転車はどんなクルマなのか? EVであり、ソフトウェア・デファインド・ビークル (SDV) だ。ティアフォーが定義するEVは、バッテリーとモーターを積んだクルマ。EVのバッテリーは電力をモーターに供給し、モーターの回転数が上がれば車輪が回転して走り、下がれば止まる仕組みになっている。
モーターを積まず、摩擦で車輪を止める油圧ブレーキ式のクルマも含めてEVとする定義もあるが、油圧ブレーキ車をティアフォーはEVとして扱わない。「全て電動化されたクルマ」をEVと呼ぶ。
SDVについては「ソフトウェアのアップデートで機能を更新するクルマ」で広く通用している定義と変わらない。だが、SDVをどうやって作るかについて “SDVのさきがけ”とされる米テスラ社と異なる思想をティアフォーは持つ。
ユーザーが選べるオープンなSDV生態系
テスラ社は独自の技術でクルマを製造する。鋳造プレス1回で車両の主要構造部を成型する「ギガプレス」はその代表格だ。そして、ソフトウェアのアップデートでクルマの機能を向上させていく。加藤氏はテスラ社のクルマ、SDV作りを「全てが自社製で究極の垂直統合」と評価する。しかし、「見方によっては70年代のIBMメインフレームみたいなもの。すごく価値はあるけれど、ガチガチに仕様が固まっていて他社は参入できず、テスラ社とユーザーのためのフレーム」。
ティアフォーが考えるSDV作りは「ユーザーが必要に応じて自作できるパソコン、オープンな生態系」だ。オープンソースソフトウェア(OSS)であるAutowareを利用することで企業がSDVに参入するハードルは低い。参入した企業の間では健全な競争が起こり、ユーザーは自由にSDVを選べる。
無人バス・タクシーが雇用を増やす? MaaS新時代
自動運転の実装は、自家用車よりも先に公共交通や運輸分野で進む公算が大きい。現在、全国各地で実証実験が行われているが、その多くは公共交通の維持確保に課題をもつ地域で行われている。ドライバーの高齢化や人手不足を解決する手段として、自動運転には大きな期待が向けられている。2030年には、ロボットバスやロボットタクシーが乗客を迎えに来て自動走行するMaaSが実現していると、ティアフォーは描く。将来のシステムによる運転は、人の手による運転よりも確実性が高く事故が大幅に減る見通しだ。
自動運転によって地域の公共交通が充実し、人手不足を解決する期待は大きい。半面、運転を仕事とする人の雇用がなくなる懸念もあるだろう。だが、自動運転の普及は新しい仕事を生む可能性がある。
自動運転車両の遠隔監視や、不具合が起こったときの遠隔操縦といった仕事だ。従来の高い運転技術が求められる二種免許など特別な資格を必要とされず、雇用の間口を広げる可能性がある。
「自動運転車の事業化もお任せ」オープンサービスの時代へ
ティアフォーの自動運転開発のユニークさは「オープンであること」。OSSのAutowareを提供することで「自動運転のビジネスをしたい人が、ゴールへの道のりの半分まで無償で行ける世界を作り上げた」(加藤氏)。さらに、ティアフォーは「ゴールへの道のりの9割まで行ける商用オープンプラットフォームができたと思っている」。最後の1割に手をかけるだけで好みの自動運転車を作れるというプラットフォームが「ブルーバード」だ。そして、次の世界では「オープンサービス」を見据える。
オープンサービスとは何か? 加藤氏は「プラットフォームを使った自動運転車の作り方も、ロボットタクシーで走らせるサービス提供も全部請け負いますよということ」と明かす。
バッテリーやモーターをクルマのどこに置くのか、必要な試験、ロボットタクシーを走らせる方法など全てを提供。「クルマ作りの全てを『教科書』のようにまとめて提供する。だれでも自動運転車を作れる世界を作っていきたい」と革新的な構想を加藤氏は抱く。
ティアフォーが2030年を見据えて提供するオープンサービス。実は、これを活かしてまちづくりにも貢献していく。オープンサービスにより、どんな手順でどんなクルマを作れるのか、どんな街をどのようにつくっていくのか、次回で詳しく説明する。
画像は、全てティアフォーより提供