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FOMM、「水に浮き、水面を進む」小型EV「FOMM ONE」 タイで量産化を経て、2020年春に日本投入を目指す

2019/11/8(金)

プレスカンファレンスでプレゼンを行う鶴巻社長と、2019年からタイで量産を開始した「FOMM ONE」

FOMMは東京モーターショー2019で、緊急時には水に浮く超小型EV「FOMM Concept One」の量産型モデルである、「FOMM ONE(フォム ワン)」を展示した。
FOMMはトヨタ車体で1人乗り超小型EV「COMS」の開発に携わっていた鶴巻日出夫氏が2013年に神奈川県で立ち上げた企業。FOMMという名前はFirst One Mile Mobilityの略であり、その名前の通り自宅から買い物に行くなど、近距離移動を目的としたモビリティの企画開発を行っている。現在FOMMは日本でR&Dを行い、タイで量産・販売するという2拠点での展開を進めているが、FOMM ONEを量産化するまで5回の試作を重ね、ついに2019年3月末からタイの工場での量産を開始したという。

「水に浮き、水面を進む」独創的なモビリティ

FOMM ONEには機能面で大きく5つの特徴がある。特に注目を集めているのが、水害時に水に浮き、水面を移動することができる「Float-Drive」の機能だ。実際にタイ北部の水害地域にFOMM ONEを3台派遣して救援物資を届けるなど、すでに災害救助の現場で活用されているという。陸上での最高速度は時速80kmで、水面移動時には時速約3kmで進むことが可能だ。ただし、これはあくまでも緊急時の機能のため、水陸両用として使用することはできないため、水浮上後には速やかに整備工場での保守整備が必要だという。

水面を移動する「FOMM ONE」


そのほかにもFOMM ONEには独創的な技術が詰まっている。1つは手でアクセル操作をする「Steering Accelerator System」だ。手元でアクセル操作を行う新操作系を搭載することで、近年、多発して社会問題にもなりつつあるブレーキの踏み間違いによる事故を未然に防げるという。2つ目は「In-wheel Motor System」。FOMM ONEはタイヤの横にモーターがついているFF車となっており、エンジンと駆動輪が両方とも車両前方にある。これにより、​加速反応に優れるだけでなく、車内スペース効率を向上し、また車両の小型化、部品点数削減を実現した。3つ目はバッテリーが交換できる「Swapping Battery System」だ。4個のバッテリーを直列で使用しており、1度の満充電で約166km走行できるという。シートの下に搭載した交換可能なカセット式バッテリーは、家庭での通常充電に加え、専用のステーションでの交換が可能だ。このバッテリー交換用に、FOMMは新たに富士通と共に「Battery Cloud」というIoTを開発した。クルマとバッテリーステーションからの情報がサーバーに集められ、スマートフォンに送られるという。バッテリー交換が必要になるとスマートフォンに交換スタンドの情報が表示され、スマホで事前に交換予約をしておくと、スタンドに到着して10分程度の交換作業後、すぐに走行を再開できるのだ。このIoTサービスは来年3月からタイでの実証実験後、拡大する予定だという。

規模生産技術をパッケージ化して世界展開へ

FOMM ONEはタイの工場「Micro-Fab」で量産している。Micro-Fabは年間1万台の生産能力がある小型EV車の量産に適した小規模生産工場で、塗装工程を排除しており、工場内では組み立てのみを行っているという。塗装済み部品を扱い、部品投入から製品完成までの全てのプロセスが9工程で完結する仕組みだ。鶴巻社長は「自動車工場で大変なのが塗装部分だが、Micro-Fabではその部分がないのが特徴」だとし、「小規模生産技術をパッケージ化して、今後、特に自動車産業のないアフリカや中南米などに展開したい」と意気込みを語った。

またブース内には、もう1台のコンセプトカー、「AWD SPORTS Concept」も展示していた。FOMM ONEで開発したIn-wheel Motor Systemを使った2人乗りの4輪駆動スポーツカーで、昨年のタイモーターショーや今年ラスベガスで開催されたCESでもベストカーを受賞したという。ほぼ軽自動車と同じ大きさというコンパクトながら、近未来的でスタイリッシュなデザインが印象的だ。鶴巻社長は「このクルマを見た多くの人から、いつ出るのかと言われているので、早く商品化したいが、なにぶんスタートアップのような企業なので資源が限られている。まずはFOMM ONEをタイで成功させていから車種展開もしていきたい」と話す。


スポーツカータイプのコンセプトカー「AWD SPORTS Concept」


鶴巻社長は「すでに200台弱のFOMM ONEをタイ市場に出したが、やはり、日本で開発したものが日本の街中で走っているのを見るのが社員一同の願い。来年3月か4月には日本のお客様にもお届けしたい」と具体的な目標を示した。日本の公道で走るFOMM ONEを見られる日も、そう遠くはないのかもしれない。

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