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免許返納時代、自治体の手で育てる移動 兵庫県福崎町、高齢者の移動を担うコミュニティバス「サルビア号」

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2019/8/2(金)

都市部でシームレスな移動が掲げられ、MaaSへの取り組みが浸透していく一方で、交通事業者の運転手不足や路線の撤退などで、交通弱者の増加が課題となっている地方部。さらに、高齢者による交通事故が社会問題化し、免許返納が促されることで、高齢者は生活の足をなくしてしまう。交通弱者が増え続ける地方部では、生活の一部である移動をだれが、どんな形で担保するのだろうか。自治体が住民に必要な移動を積極的に考え、実践する町、兵庫県南西部に位置する福崎町を取材した。
免許返納後の3年間は無料のコミュニティバス

兵庫県の南西部に位置する福崎町。北は市川町、南・西に姫路市、東は加西市に隣接している。町を縦横断する形で、東西には中国縦貫自動車道、南北には播但連絡道路が整備され、その交差点には「福崎インターチェンジ」があり、広域的な交通を担っている地域だ。公共交通機関は、姫路市と但馬地域を結ぶJR播但線と福崎駅~姫路駅を結ぶバス路線が2路線、加西~姫路駅を結ぶ経由地となるバス路線が1路線ある。交通空白地帯とはいえない地域だが、自家用車での生活が浸透しており、「外出の際にはほとんどの町民が自家用車を利用する」(尾﨑吉晴町長)という。町民19,200人のうち、高齢者は約3割を占める。

かっぱの町、福崎町。民俗学の父、柳田國男生誕の町としても知られている。特産物は大麦の一種であるもち麦。



町花であるサルビアが描かれたコミュニティバス「サルビア号」には、まちなか便、郊外便、買い物バス、市川町連携コミュニティバスの4種類がある。乗車料金は1回100円、免許返納後の3年間は、無料で利用できる。運営主体は福崎町で、運行事業者は、神姫バスと、神崎交通の2事業者。現在、一日に平均70人が利用する。

バスはいずれも定時定路線型運行で(一部、デマンド運行)、まちなか便は公共施設や商業施設など町の主要地区への移動に、郊外便は川西及び川東地区への買い物や医療機関等への移動、買い物バスは買い物困難地域の町民が買い物や役場等の手続きなどで利用する。町をまたぐ市川町連携コミュニティバスは県下初の事例で、北に隣接する市川町のコミュニティバスと連携し、医療機関や買い物への移動に利用できる。「自治体同士でコミュニケーションを取ることで、運行ルートも広範囲になり、利便性が向上する」(まちづくり課 都市計画係  藤田裕文氏。以下、藤田氏)。町外への移動需要にも自治体の枠を越えて対応している。

「サルビア号」の前身は平成11年に始まった交通弱者等への移動支援のための福祉バスだ。定時定路線で小型バス1台での無料運行だった。平成24年には有償化、平成30年には郊外便を増車し、車両は計3台となった。


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