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関西電力、モビリティ事業「カンモビ」で“充電以外”にも注力【JMS2025】

2025/12/1(月)

関西電力は、東京ビッグサイトで開催された「Japan Mobility Show 2025」(以下、JMS2025)に出展した。同社の出展は今回が初めて。電力会社という立場から、自動車業界の展示会でどんな提案を行ったのか。テーマに掲げる「エネルギーで描く未来のスマートモビリティ社会」を紐解いていく。

電力会社が推進するモビリティサービスとは?

関西電力のソリューション本部で副本部長を務める児玉智氏は、プレスブリーフィングで同社が携わるモビリティ事業について説明した。「私たちは関西を中心に電気事業をやっている一方、実は多様なエネルギー事業も手がけている。モビリティ事業に関しても数年前から取り組んでおり、蓄電池、カーボンクレジット、まちづくりなどのモビリティと親和性のある多様な事業を展開してきた」と述べた。

関西電力のソリューション本部で副本部長を務める児玉智氏

関西電力 ソリューション本部 副本部長 児玉智氏


同社のモビリティ事業は「カンモビ」ブランドで展開している。この取り組みの中で既にサービスを開始しているのが、「カンモビチャージ」だ。商業施設や店舗などに設置する公共EV充電設備を提供するこのサービスは、ガソリンスタンドで給油する従来のスタイルとは異なり、買い物や飲食の間に充電を済ませる想定で、利用者の行動変容を促す狙いがある。

カンモビで提供・実証中のサービスと、今後の構想

カンモビで提供・実証中のサービスと、今後の構想


もう一つの柱が「カンモビパッケージ」だ。法人向けのEV導入を支援するサービスで、EV車両から充電器、設置工事、アフターサポートまでをパッケージで提供する。車両やインフラの整備だけでなく、エネルギーマネジメントシステムを用いた充電制御により、電気使用量のピークを抑え、電気料金の抑制などに貢献するという。

JMS2025のブースでは、充電中に電池の劣化診断ができるポータブル充電器など、実証中のサービスも展示された。可搬型の利点を生かしつつ、さらに充電中にバッテリーの劣化を診断する機能を加えることで、バッテリーの二次利用などを含めた中古EV市場の活性化に貢献できるサービスとして位置づけている。
充電中に電池の劣化診断ができるポータブル充電器

充電中に電池の劣化診断ができるポータブル充電器


万博での実証から見えた次世代モビリティ

児玉氏は、大阪・関西万博で取り組んだ複数の実証実験についても言及した。その1つが、EVバスの走行中ワイヤレス給電の実証だ。道路の下に埋め込んだコイルから非接触でバッテリーを充電する技術は、万博会場内の外周バス「e Mover」を用いて検証された。

また、同社は陸上を走るモビリティのみならず、海と空のモビリティの電動化に関する事業にも取り組んでいる。万博では、水素燃料電池船のエネルギーマネジメントシステムと充電設備の構築に携わったほか、空飛ぶクルマ向けの超急速充電システムの実証実験も行った。


児玉氏はこれらの取り組みを踏まえ、「今回のテーマ『エネルギーで描く未来のスマートモビリティ社会』を実現するには、やはり皆様と一緒に取り組みたい」と述べた。同社が得意とするエネルギー分野に注力しつつ、他社との協業も積極的に行う姿勢を示した。

実際、万博会場内での走行中ワイヤレス給電の実証は、大阪メトロ、ダイヘン、大林組と協業し、水素燃料電池船は岩谷産業と協業した。同様に、今後も多数のプレーヤーとの協業を見据えながら、モビリティ産業での展開を進める方針だ。

自動運転社会を意識したステーション構想

前述したように、EVの充電サービスやパッケージ型のサービスは既に市場での展開が進んでいる。その一方で、今回のJMS2025で構想中の事業として展示されたのが、「次世代モビリティステーション」だ。
次世代モビリティステーションの模型

次世代モビリティステーションの模型


関西電力のeモビリティ事業グループで部長を務める田口雄一郎氏は、この次世代モビリティステーション構想について、以下のように説明した。

「自動運転車が自動で給電して、自動で車庫に帰っていく。車庫では自動で荷物が載せられ、そして自動で運ばれていく。そういう世界をイメージした構想です」

物流や人流などの多様な用途のモビリティが行き交う姿を想定した場合、一体的にモビリティが集約される拠点が必要になる。そのような未来像をイメージした構想だという。一例として、物流の結節点に設けたステーションを想定した場合、自動運転トラックへの積み込みを行うスペースを設置した上で、自動運転バスやタクシーの乗降場、あるいは電動キックボードや自転車などのパーソナルモビリティのシェアステーションを併設。さらに屋上には空飛ぶクルマの離着陸場を設け、異なるステーション間を結ぶ。そんなイメージだ。

自社の強みを生かしたEVのインフラ整備やサービス提供にとどまらず、電力会社として、なぜここまでモビリティサービスの領域に踏み込んだ構想を掲げたのだろうか。その意図について田口氏は、「充電に関するサービスだけではなく、クルマを”テコ”にしたサービス展開に取り組むことで、将来のEV化社会をけん引し、マーケットメイクを行いたい」と語った。

ただし、このステーションの建設や全てのサービスを関西電力だけで担う計画は、現時点ではない。あくまで先ほどの児玉氏の発言のように協調路線を基本としつつ、自社の強みを生かせる電力事業やモビリティサービスを担いたい、という考えだ。田口氏は、現在の取り組み状況について、「まちづくりに参画する中で、例えば自動運転を用いた物流や、(モビリティの)シェアリングサービスなどの実証を行うために、自治体や商業施設に提案を行っている段階」と述べ、部分的なサービスの検証から始める方針を示した。

「エネルギーで描く未来のスマートモビリティ社会」をイメージした模型展示

「エネルギーで描く未来のスマートモビリティ社会」をイメージした模型展示


(取材・文/和田翔)

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