逆説のスタートアップ思考 -Supernova- スパノバ株式会社
2017/11/9(木)
―既存技術の応用モデルを軸にしている理由は何ですか。
古くて大きい産業が、そもそもIT化されていないんですね。2010年くらいまでに培われた技術インフラがそもそも入っていないので、この状態でAI(人工知能)やVRといっても上滑りしてしまいます。なので、新しい技術シーズはあくまでも2010年までのインフラが導入されている企業に限ります。これができていない企業が圧倒的にあるので、まずIT技術インフラを入れ込んだ先にAIを入れて強くすることが必要で、その前段階に至っていない企業がAIといっても刺さらないし、ずれています。これを、私たちは隠れた事実と捉えています。新しい技術に皆さん注目しますが、実は違うのではないかという仮説です。
なぜ、ハードテックでスタートアップなのかというと、技術革新の普及の流れは昔から一定パターンで起きているということがあるからです。特定の技術が急速になくなる時期があって、その後その領域が勃興していく。例えば、1971年以降はインターネットの時代で、関連のものがどんどん出てきて、インターネット領域が勃興しました。そこで、大抵は、すごいお金が入りバブルが起きて、崩壊するというパターンになります。そのときにつくられた技術で再評価されたものが、今度は応用されるというのが以前から行われているパターンです。
そこで、この時代の技術を、遅れている領域に応用するという考え方をしています。AIとかはまだ次の時代なんです。その上で、この遅れている領域は基本的に複雑がゆえに遅れているのだと思っています。起業家はビジネスモデルで切ろうとするんですが、ビジネスモデルが跳ね返されるパターンが多いんですね。ということは、ビジネスモデルは重要でなくて、やってみて構造を理解するというサイクルをぐるぐる回していけるようなタイプの人間が重要です。チームとしての行動理解力があり、その上で領域として、一個切ってみたら横に拡張しうる領域に挑んでいるというのが重要だと捉えています。
つまり、一個でも、ニッチでもいいので挑んでみて、拡張しうるところに違う領域があれば一個独占したことが、その産業を置き換えるかもしれず、産業をつくる時代に来ているのではないかと捉えています。
―新産業創出に挑むためのポイントとは何なのでしょうか。詳しくお聴かせください。
私たちは「3つ逆張り」を行っています。(1)Web領域ではなく時間がかかりそうな、一見面倒くさそうな領域に挑むこと、(2)技術軸として、新しい技術ではなく枯れた技術を応用すること、(3)ビジネスモデルではなく、チームの可能性と領域の拡張性に賭けるということの3つが特徴になっています。ちょっと間違うと時間がかかりすぎて潰れてしまうようなギリギリのラインに挑みにくい構造があるので、ここにこそブルーオーシャンがあって、かつ産業を置き換える領域があるという逆張りですね。
具体的な運営方針としては、大抵数カ月のプログラムでハンズオンで投資をするパターンが多いのですが、全て真逆にしています。ビジネス化に時間がかかりそうな領域ですので、ファンドを持つことはネックで、超長期支援が難しくなってしまいます。
あくまでもマッチングさせるという中立性を維持するポジションにしているというのが一個目。その上で、例えば金融や自動車、宇宙といったときに、事業のライフスパンというものがあります。これを数カ月のプログラムに押し込んだとして、できることはプレゼンのブラッシュアップぐらいしかありません。これでは意味がないです。卒業という概念を消して、必要なときに必要なものを適切な分だけ最適化して提供するためハンズオフという形にしています。
―具体的にどのように支援していますか?
例えば、週一回会わなければいけないプログラムにすると、運営側も負担がかかり、運営側の都合で起業家を振り回してしまいます。それをしないためにも、ハンズオフで起業家側から必要なときに来てもらうというのが特徴になっています。起業家がしたいような最適な支援環境の構築を促しています。例えばメンタリング・デーのようなものを月一回で用意して、メンターに来ていただいたりなど、そのようなことはたくさん提供したり、何百社を巻き込んだり、事業者ネットワークや地域ネットワーク、フリーランスネットワークなどをつくって、リソースは何でもある程度は提供できるような環境をつくっています。しかし、全部の参加不参加は起業家が決めてくれという形にしています。なので、起業家にとって都合のいい存在として、自立・自発で決めるというスタンスにしています。あともう一つ重要なものとしては、Supernova自体で全部できるとは思っていないので、併用していいよと言っています。他の支援環境と合わせ技をすれば、その会社にあった支援環境をつくれるのではないかと思っています。そうすることによって、起業家に応じた個別最適化された環境ができると仮定しています。あともう一つは、事業領域に特有なリスクは、私たちでは削減できないと思っています。
共通のリスクは何とかできると思うのですが、こういうものになってくるとSupernovaにできる気は一切しません。なので、そういうことができる支援環境と合わせてお互い違う領域でできることをしようという形にしています。
あとは、先ほど言ったように中立的な立場でスタートアップファーストで支援するためにファンド化はしていません。あくまでも、スタートアップと投資家を結びつけるコミュニティにしようとした結果、このような逆張りのエコシステムになったという特徴があります。1年ほど試行錯誤して、今の形に行きつきました。
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