クーガーCEOインタビュー:人間らしいコミュニケーションで クルマに新たな価値を 「AI×AR×ブロックチェーン」の 次世代インターフェース(1/2)
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2019/4/19(金)
クーガー株式会社(以下、クーガー)は、新たな時代の価値創造を目指し、「AI×AR×ブロックチェーンを組み合わせた次世代インターフェースの実現」を掲げている。従来のAIとは一線を画す、より人間らしいコミュニケーションを可能にした「バーチャルヒューマンエージェント(以下、VHA)」を用い、多種多様な分野への応用を目指している。さまざまな分野を組み合わせた独自の強みを持つクーガーの技術は、変わりゆくクルマの役割にどのような付加価値を生み出すのだろうか。
「AI×AR×ブロックチェーン」を横断的に組み合わせ独自の価値を
クーガーが開発する「CONNECTOME(コネクトーム)」は、AI・IoT・AR/VR・ブロックチェーンを組み合わせ、空間をスマート化するテクノロジーだ。コネクトームとは、元来人間の脳の神経回路を意味する。CEOの石井敦氏(以下、石井氏は)、「人間の脳はいろいろなものを見たり聞いたりすることに加え、非常に複雑な状況を理解することができる」と語る。「IoTは人間で言うと五感、AIは頭脳、ロボティクスは体そのもの、そしてブロックチェーンは血液や神経のようなもの。それらを組み合わせることは、正に人間の体におけるコネクトームの役割に似ている」(石井氏)という。個々の分野が切り離されて語られることの多いこれらのテクノロジーを、有機的に組み合わせていくことこそ、クーガーの取り組みのコンセプトであり、強みであると言えるだろう。これまで積み重ねてきた実績にも、クーガーが描く広大なビジョンの実現に向けた取り組みを見ることができる。まず一つが「ヒューマン型意思決定AI」だ。この技術は、KDDIの「バーチャルキャラクター×xR」プロジェクトに提供された。バーチャルキャラクターが視覚、聴覚、感情を持ち、人間のようにコミュニケーションをとることができる技術だ。
二つ目は、「AI学習」。AIやロボットは、特定の状況を体験しないと学習できないという前提がある。クーガーが開発したAIラーニングシミュレーターによって、たとえば学校や街中など、あらゆる状況を瞬時に作り複数のデータ学習を行い、AIを学習・発展させていく技術だ。これはもちろん自動運転技術をはじめとし、自動車業界にも利用できる技術で、このシミュレーターはすでにホンダへ導入されている。
三つ目は、「クラウドロボティクス」。例えばロボットが物をつかもうとした際に失敗したとする。その情報をクラウド上に集め、別のロボットがつかもうとする際にそのときの情報を踏まえて失敗しないようにする、といったことが可能になる。クラウドにデータを集積することで、動作精度を上げ、AIがより賢くなる技術だ。Amazonが主催するロボットコンテスト「Amazon Robotics Challenge」の上位チームに技術提供を行い、共同開発を行っている。
最後の四つ目は、「スマートコントラクト連動」と呼ばれるものだ。これは、ブロックチェーンを活用してデータの改ざんなどを防いだ上で契約の自動化を行うための技術で、クーガーとKDDIがその課題や効果の検証に2017年から取り組み始めた。この取り組みは、企業向け分散アプリケーションのためのプラットフォームである「Enterprise Ethereum(エンタープライズ イーサリアム)」を用いた国内初の実証実験として注目された。
これらの実績を挙げていくと、クーガーの掲げる「AI×AR×ブロックチェーンを組み合わせた次世代インターフェースの実現」のため、必要な数々のテクノロジーを横断的に網羅し、研ぎ澄ませていることがわかるだろう。それでは、これらの技術は100年に一度の大変革期と言われる自動車業界において、どのような価値を持つのだろうか。石井氏とのインタビューを通して迫りたい。