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FOMM 水に浮く超小型モビリティ 途上国のモビリティと雇用創出を目指す

2017/12/27(水)



FOMM Concept Oneの充電口


──日本国内ではなくタイでの展開を考えているのですか?

そうですね。日本には軽自動車があるため、なかなか4人乗りのモビリティの市場が立ち上がりません。FOMMの車両は、欧州のL7eというカテゴリーの規格を取得しており、これは日本のミニカーの規格には収まりません。展開を考えているタイは、自動車部品メーカーが非常に多く、現地での生産がしやすいという利点があります。FOMMは自動車メーカーという立場というよりは開発会社というイメージです。日本で開発した技術を持って、海外の工場で生産するという形を考えています。そのため、部品点数は1600点ほどと少なく、一番重い部品であるモーターも30kgほどと1人で持てる重さとなっています。組み立てに大きな設備が必要なく、小さい工場で少ない台数でも組み立てられるように設計しています。
また、タイではクルマが必需品となっています。公共交通はバンコク市内では発達していますが、少し離れるとあまりありません。これからクルマに乗る人が増えてくるという段階です。特に都市部の富裕層はクルマを2台以上保有する人が多いです。最初のターゲットとしてこういった富裕層のセカンドカーを狙っており、1台は通常利用や遠距離利用、もう1台は手軽に近距離の移動のためにFOMMの車両を利用するといったモデルを考えています。

──実際の利用シーンとしては近距離の移動を考えられているということですね。

First One Mile Mobilityという名前の通り、近場を走れるモビリティです。買い物に行ったり、子どもの送迎をしたり、通勤に利用したりなど、街中を小さいクルマでキビキビと便利に走ることをイメージしています。小型のモビリティの利便性という点を考えると、何百キロという遠出をする人はほとんどいないと思うので、近距離移動に利用するという点が需要だと考えています。

ダッシュボードとハイパワークーラー。クーラー使用時の1充電走行距離は約110キロ。


──日本国内でもニーズはあるのでしょうか?

L7eの規格の車両ではありますが、日本の保安基準を満たそうとしています。国内の公道を走行することはできませんが、施設内や私有地などではニーズがあると考えています。コンパクトで4人乗りという利便性を生かし、例えば部品サプライヤーの工場内の移動に利用することなどもできます。排ガスも出さず屋内も走ることができるので、そういう点でメリットはあると思います。

──車両の開発で苦労した点はありますか?

長い間苦労したのは、重量を軽くするということです。欧州のL7eの規格では、バッテリーを除いて450kgという規制があります。このクルマは軽自動車に近い形で、4人乗りかつドアをつけるなどいろいろな装備品があります。特に、重量の大きいインホイールモーターを実装しながら重量を抑えるのは非常に大変でした。
もう1点はドアの形状です。開発当初は、コンパクトな車体で狭いところで開けられるという利点を考えてスライドドアを採用していました。しかし、乗降時にドアが少し残るためリアの座席に乗りづらいという点や、重量、コストなどを考えスイングドアに変更しました。また、スライドドアだと開口部の密閉性を保つことが難しく、水に浮くという機能性も考慮しています。
また、現在の課題としてもバッテリー容量が少なく1回の充電あたりの走行距離が短いことが挙げられます。当初はバッテリーを2個ずつ使用し切り替えながら走ることを考えていましたが、バッテリーを切り替える部分が技術的に難しく、4つ全てを使う方式に変更しました。これにより航続距離が長くなっています。
2013年に始まった会社ですが、当初開発していたメンバーも入れ替わったり、ノウハウも少ない中で、このような課題を解決し、全ての自動車のパーツを考え設計していくことは非常に難しかったです。

アクセルが一体となったハンドル。奥に見えるレバーのどちらかを引くことでアクセルがかかる。両方のレバーを同時に引くとパワーモードとなり、さらに加速する。



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