富士通、自治体向けオンデマンド交通サービス提供へ 地域交通の活性化支援
2019/4/16(火)
富士通 Mobility IoT事業本部 インタビュー
――2018年に行われた実証当時の背景と目的について教えてください。
石川氏:自治体が乗合サービスを含めたシェアリングエコノミーに取り組む際は、基本的には交通難民や観光客に向けた二次交通としての機能が求められます。今回は、第一に交通難民である地域の人を助け、将来的に観光へも展開していこうという方向性で何かできないかと話を頂きました。自治体との調整も含めて約1年間の準備を経て、昨年の2月から3月にかけて、伊達市月舘町の住民約500名を対象に実施しました。――地域との合意形成の際、キーマンとなった方がいたのでしょうか?
石川氏:自治会長が地域の存続を賭け、共助社会実現のため何かできることはないか、という意気込みを持っており、今回の実証実験に至っています。非常に高い問題意識を持ち取り組んでいただきました。――実証実験の内容を教えてください。
石川氏:地域の方々から、自分の車で送迎を行う運転手と、移動したい利用者を募って、サービスでマッチングして送迎に向かうという一連の実証実験を行いました。マッチングサービスなどはもちろんのこと、運転評価についても工夫しました。自家用車に簡単な車載器を取り付けるだけでデータを取得できます。センサーからの情報や、位置情報などを取得し、運転評価として点数化するスマートバリュー社(大阪市)のサービスを活用しています。運転点数を表示して、安全面を担保できる仕掛けを作ったという点は新しい取り組みだと思います。――御社の「SPATIOWL」を用いたサービスとはとはどのようなものでしょうか?
金氏:昨今カーシェアをはじめ、シェアリングエコノミーの市場が拡大しています。当社が地方都市などで行ってきたデマンド交通(※注)の領域では、4点の課題が挙げられます。一つ目は「車両の稼働率の偏りによる採算性悪化」です。需要のピークに合わせて車両を確保しているので、利用者が少ない時間帯には無駄が発生します。
二つ目は「運行計画の見直しが不十分なこと」です。自治体に、データを分析し見直すという作業を行う専門職員がいないため、デマンド交通導入後にデータに基づいた改善ができず、サービスが低下してしまいます。
三つ目は、「地域内交通の連携不足」です。デマンド交通を導入したものの、地域内の幹線を走る交通と一体になった体系が構築できず利便性が上がらないケースが多くあります。
四つ目は「近視眼的な事業評価による事業中断」です。デマンド交通は、補助金などの支援を受けているケースが多いです。国が行う補助事業の場合、3年以内の短期間で事業が評価され、補助金の打ち切りと共に事業が終わってしまうというケースもあります。本来は、直接効果と間接効果を長期間かけて測定し、事業を継続させることが必要です。このこれらの課題を踏まえて、オンデマンド交通を検討しています。
※注: 富士通は2018年に発表した「オンデマンド交通サービスを軸としたシェアリングエコノミーの実現」の中で、デマンド交通を「利用者が運行事業者に電話などで希望時刻、乗車場所を予約し、ドライバーが降車場所まで送迎するサービス」と定義し、「従来のデマンド交通よりリアルタイムに利用者の要望に応え、最適な移動手段を提供するSPATIOWLを用いたサービス」を、オンデマンド交通としている。本記事ではその定義に沿って記載する。
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