台湾版MaaSは日本のモデルケースとなるか?(1/2):台北のMaaSについて
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2019/1/18(金)
福岡から飛行機で約2時間半、東京から約4時間の距離にある台湾。過去に日本が作った建物やインフラなどの基盤が残り、都市交通の面でも日本と類似点が多い。昨今は観光スポットとして注目されているが、交通関係においてもオープンデータの推進などでICT活用が日本よりも進んでいる部分があり、公共交通の関係者の間で注目が徐々に高まっている。欧米事例は日本国内と環境が大きくかけ離れているため、日本にそのまま持ち込むことは難しい。しかし、台湾の事例は日本に条件が近いため参考にできる点が多いのではないだろうか。台湾では日本に先駆けてMaaSの検討が2017年から行われおり、すでにサービスが開始している。
(モビリティジャーナリスト 楠田悦子)
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台湾のMaaSアプリは、大都市の台北・高雄から
北部に位置する台北のMaaSアプリは「UMAJ遊.買.集(ユマジ)」と名付けられ、台湾交通通信省MOTC(Ministry of Transportation and Communications, Taiwan)と台湾通信大手の中華電信(CHT)が共同で開発・運営している。サービス提供エリアは台北市、新北市(ニュー台北)、宜蘭(イーラン)など北部の都市圏だ。また、南部最大の都市である高雄市でもMaaSアプリ「Men-GO」の導入が進んでいる。そこで、台湾の交通通信省・交通部科技顧問室科長の劉建邦(Chien-Pang Liu 以下、劉氏)、高雄市政府交通局副局長の張淑娟(ShuChuan,Chang 以下、張氏)の両氏に、MaaSへ向けた取り組みについて話を伺った。本稿はまず、劉氏が紹介した台北のMaaS状況を取り上げる。台湾の交通通信省交通部科技顧問室科長の劉建邦氏に台湾がMaaSに取り組む理由と台北のMaaSについて聞いた。
――台湾が政府主導でMaaSに取組むことになったきっかけを教えてください。
劉氏:ご存知の通り、MaaSは世界中で数年前から注目されています。しかし、始めはMaaSの実現方法や持続可能なビジネスモデルについて、誰も分からない状況でした。そこで台湾交通通信省(MOTC)が主体となってMaaSの検討を2017年から始めました。MaaS実現の初期には莫大な投資が必要です。また台湾の交通は複雑で、鉄道、メトロ、バス、タクシー、自転車シェア、カーシェアなどに加え、フェリーもあります。予約、支払いなどのシステム構築から始める必要があります。そのため台湾交通通信省が初期の開発に着手して実現を後押ししようとしています。
――MaaSに取り組むことにはどういうメリットがあると考えていますか?
劉氏:さまざまなメリットがあると考えました。例えば、QRコードなどの決済システムの導入が進んだり、顧客の移動の行動を変容したりするとこも可能でしょう。MaaSは将来への投資です。公共交通サービスの統合、MaaS産業やマーケットの創造、交通運行事業者のデジタル化の促進、APIスタンダード、決済オープンプラットフォームの創造を目指しています。台湾交通通信省のMaaSは「Policy+Integrated Service+Customer Oriented=MaaS (政策 +統合されたサービス +カスタマーオリエンティド=MaaS)」で一つのアプリで経路検索、予約、決済までできる”One App”です。
まずは都市部のMaaSから
――検討を始めたのはどのエリアからでしょうか?
劉氏:北部の台北と南部の高雄です。Rural MaaS (地方部のMaaS)の検討も行なっていますが、Urban MaaS (都市部のMaaS)に着目しています。台北は台湾交通通信省が推進する3年計画のプロジェクトです。高雄は台湾交通通信省のシンクタンクなどとして機能する交通研究所(Institute of Transportation, IOT)が責任者として2年間のプロジェクトとして進めています。――台北のMaaSプロジェクトの特色はなんでしょうか?
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